論文概要

2020~2024年

Yoshida, M. (2024) Geosci. Lett.
TBA
Yoshida, M. (2024) Gondwana Res.
地球史における超大陸サイクルのさまざまなシナリオを考慮した理論モデルを用いて、超大陸サイクルが数億年スケールの海水準変動に与える影響を推定した。超大陸の分裂から再形成までの海水準変動を解析したところ、海水準の復元には、海洋プレートが海嶺で生成されてから十分な時間が経つと海洋底(水深)が一定の深さに緩やかに推移する「フラットニング(平坦化)」の効果が重要であることがわかった。海洋底のフラットニングはマントルの対流運動が影響している可能性があるため、本研究の結果は、地球内部の大規模な変動が海水準を通じて間接的に地球表層の環境変動に影響を与えていることを示唆する。
Yoshida, M. (2023) Planet. Space Sci.
三次元全球マントル対流モデルにより、粘性率の温度依存性がマントル対流パターンに及ぼす影響を詳細に調べた。その結果、従来から知られている停滞リッド型対流では、停滞リッドに覆われているマントル対流の水平スケールは短波長構造を示すが、本研究では、ある限られたリッドの粘性率比の範囲内では、地表面は停滞リッドに覆われているものの、マントル対流の水平スケールは大規模構造(半球構造)を示す新しいパターンが観察され、準停滞リッド型対流と名付けた。
Izumi, M., Hirauchi, K., and Yoshida, M. (2023) Tectonophys.
海洋プレートの自発的沈み込み開始に必要な断裂帯の平均強度を明らかにするべく、スラブ脱水作用を考慮した二次元粘弾性体マントル対流数値シミュレーション実験を行った。その結果、両海洋プレート間の年代差が70 Myr以上の場合、沈み込み開始に必要な最大の平均断裂帯強度は7 MPaであることがわかった。
Yoshida, M. (2023) Dynamics of Plate Tectonics and Mantle Convection
TBA
Yoshida, M. (2023) Lithosphere
TBA
Iwamori, H., Yoshida, M., and Nakamura, H. (2022) Front. Earth Sci.
地球内部の大規模構造、特に、1次・2次が卓越する長波長構造、あるいは、半球規模のマントル構造の原因に注目して解説した。地球化学と地球物理学の異なるアプローチによる観測結果を統合し、大陸移動、及び、マントルとコアの対流に関する数値シミュレーションの結果と合わせて、固体地球の「トップダウン半球ダイナミクス」モデルを検討した。その結果、超大陸の存在、マントルから内核までの地震波速度構造の半球的、かつトップダウン的な繋がりが、地球内部の大規模構造とダイナミクスの形成に重要な役割を果たしたことが示唆された。
Katayama, I., Yoshida, M., and Hirauchi, K. (2022) Front. Earth Sci.
リソスフェアのレオロジー成層と弾性が沈み込み開始に与える影響について、熱クラックとリソスフェアへの海水浸透に起因する可能性があることを検証した。水のレオロジーに対する影響に加え、剛性率もクラックの発生や流体に敏感であるが、数値モデリングにより、プレート沈み込みの開始には水による弱化と剛性率の小さいリソスフェアが必須であることがわかった。この結果は、熱クラックの形成と海水の浸透が沈み込み開始に重要な役割を果たすことを示しており、初期地球のみならず、地球以外の惑星でも作用していた可能性が高いことを示唆する。
Yoshida, M. (2022) Tectonophysics
TBA
Yoshida, M. and Yoshizawa, K. (2021) Annu. Rev. Earth Planet. Sci.
これまでの著者の研究成果を主とした地球物理学的研究と地震学的研究の両側面から地球史における安定な大陸移動について総括した。マントル対流の数値計算では、大陸リソスフェアとマントルが力学的に「適度に」カップルしながら大陸移動が起こっていることや、クラトンの10億年スケールの安定化にはその周囲の変動帯(低粘性帯)の存在が必要不可欠であることがわかった。一方、地震学的解析によって、豪州大陸下の三つの太古代のクラトン間に存在する縫合帯がクラトンの長寿に重要な役割を果たしていることなどを議論した。
Yoshida, M. et al. (2020b) Tectonophys.
二次元粘弾塑・熱組成対流モデルを用いた数値シミュレーションにより、大陸リソスフェアの縁辺域に、海溝の後退による伸張応力場が働く条件下において大陸リフティングが再現する条件を調べた。大陸の伸張速度や無水・含水下のマントルの活性化体積の値を系統的に変化させて計算した結果、いずれも約2000万年以内で大陸が分裂した。このとき、変形する大陸リソスフェア直下のマントルに局所的に発達する高歪速度領域によってリフティングが加速し、特に含水下マントルの条件で顕著であることがわかった。
Yoshida, M. et al. (2020a) Tectonophys.
約1億年前の大陸分布を初期状態とした三次元全球マントル対流数値シミュレーションを実施した。下部マントルの大規模温度構造の初期条件は、現在の地球のトモグラフィーモデルから推定される温度構造を参照した。その結果、対流が安定化するにつれてゴンドワナ大陸東縁に沿って広範な沈み込み帯が発達することがわかった。これは、当時の当該地域下に能動的なマントルプルームがなかった事実も考慮すると、ジーランディアの分裂の原因が沈み込みプレートの後退(海溝の後退)であったことを示唆する。
Yoshida, M. and Santosh, M. (2020) Energy Geoscience
固体地球内部が持つエネルギーに起因する1020 J オーダーの地球科学現象のエネルギーの見積もりと人間活動によって生まれるエネルギーについて簡単に考察した。現在の地球内部から放出される熱エネルギーは観測される地殻熱流量のデータに基づくとEearth=1.4×1021 J/yrで、これは世界の人間が一年間に消費するエネルギーより2~3倍大きい。主要なホットスポットプルームから放出される熱量はEearthの約6%である。また、地球の永年冷却によって放出されるエネルギーは6.6×1020 J/yrである。