論文概要

2005~2009年

Yoshida, M. and Nakakuki, T. (2009) Phys. Earth Planet. Int.
リソスフェアとマントルの水平粘性率変化(LVV、低粘性のプレート境界や高粘性の沈み込むスラブ)が長波長ジオイド異常に及ぼす影響を調べるため、三次元球殻内で定常流れ場の計算を行った。その結果、上部マントルに高粘性のスラブを持つ場合、沈み込み帯で観察される正のジオイド異常は、上部・下部マントルの粘性率比が10^3程度で、かつプレート内部のLVVを考慮したときに再現され、下部マントルのLVVの程度はジオイドパターンに大きな影響を及ぼすことなどが分かった。
Yoshida, M. (2008) Geophys. Res. Lett.
ブジネスク近似と拡張ブジネスク近似(EBA)の下で、粘性率が温度に強く依存する場合のマントル対流の数値シミュレーションを行った。その結果、ブジネスク近似下とは異なりEBA下では、次数1や2が卓越するマントル対流パターンが発生しないが、リソスフェアとマントルの粘性率比が十分にある場合で粘塑性レオロジー(降伏応力)を導入すると、環太平洋沈み込み帯に似た全球スケールのプレート収束境界が発生し、次数2パターンが実現されることなどを明らかにした。
Yoshida, M. (2008) Geochem. Geophys. Geosyst.
有限体積法に基づいて改良されたマントル対流の数値計算モデルを用いて、コア・マントル境界のトポグラフィーを推定した。計算の結果、近年地震学的観測で解明されつつある±約1.5 km程度の地形の凸凹を説明するためには、(1)マントル最下部のD"層での低粘性帯、(2)下部マントルに沈み込むスラブの結晶の細粒化に伴う粘性率の減少、(3)マントル深部の化学組成変化(南太平洋下とアフリカ下に存在する高密度のパイル)をモデルに考慮する必要があることが分かった。
Yoshida, M. and Kageyama, A. (2006) J. Geophys. Res.
粘性率が温度に強く依存する場合のマントル対流の数値シミュレーションを行った。粘性率の温度依存性の程度について系統的なパラメータ・スタディを行った結果、粘性率が温度に中程度に依存するマントル対流において、次数1対流と次数2対流が現れることを発見し、次数1や2が卓越するマントル対流パターンが地球型惑星のマントル対流(現在の火星や金星、あるいはプレートテクトニクスがない場合の地球)の基本構造であることを明らかにした。
Yoshida, M. and Ogawa, M. (2005) Earth Planet. Sci. Lett.
プレート運動を自発的に発生させるレオロジーを考慮した二次元矩形内のマントル対流モデルを用いて、上昇プルームがCMBから地表面まで運ぶ熱流量を推定した。その結果、プルームによって運ばれる熱流量は、地表面から放出される総熱流量のたかだか30%以下であることを示した。このことは、観測されるプルームスウェルの規模のみから推定出来ない熱流量の存在と、マントル下部に放射性熱源に富む組成的に不均質な物質の存在を示唆する。
Kageyama, A. and Yoshida, M. (2005) J. Phys.
インヤン格子に基づく地球ダイナモシミュレーションコードを開発し、地球シミュレータで4096 CPUを用いて15.2テラフロップスの実効性能値を達成した。これは理論最高性能値の46%に相当する。また、インヤン格子に基づくマントル対流シミュレーションコードにより、レイリー数が実際の地球マントルに相当する10^7で、かつ、粘性率の温度依存性による対流層上下面の粘性率比が10^6のマントル対流を解くことに成功した。