論文概要

1999~2004年

Kageyama, A. et al. (2004) Proc. ACM/IEEE Supercomput. Conf.
インヤン格子と名付けた新しい格子系の上で、磁気流体力学方程式を高速かつ高効率で解く新たなシミュレーションコードを作成し、地球シミュレータの特性を生かすよう最適化した。その結果、開発されたコードによって、双極子磁場の生成やその逆転という地球磁場の特性を再現する地磁気ダイナモのシミュレーション計算を高速かつ高効率に実行できることを実証した。この成果は「2004年ゴードン・ベル賞(最高性能賞)」を受賞した。
Yoshida, M. (2004) Earth Planet. Space
プレート運動を自発的に発生させるレオロジー(温度と圧力、応力の履歴に依存する粘性率)を持つ二次元矩形内のマントル対流の数値シミュレーションを行った。モデルには、深さ410 kmと660 kmの相転移の影響を考慮した。その結果、下部マントル起源のプルーム、プレート運動に励起された大規模流れに関係するプルーム、上部マントルに閉じた小規模対流に関係するプルームの三種類の上昇プルームが識別されることを明らかにした。
Yoshida, M. (2004) Phys. Earth Planet. Int.
リソスフェアとマントルの水平粘性率変化(LVV)が長波長ジオイド異常に及ぼす影響を調べるため、三次元球殻内の瞬間流れ場の計算と二次元矩形内のマントル対流の数値シミュレーションを行った。前者で入力した密度異常モデルは地震波トモグラフィーモデルに基づき、マントル内のLVVは地震波速度と温度との関係に基づいて決定した。両方のモデルの結果を合わせて、観測される長波長ジオイドはプレートテクトニクスに起因する地球表層のLVVに強く依存することを示した。
Yoshida, M. and Kageyama, A. (2004) Geophys. Res. Lett.
球座標系に沿った緯度経度格子での極の問題(極での座標特異点と、緯度方向の格子間隔の著しい不均一性)を克服した独自の計算格子(インヤン格子)を用いて、有限差分法による実用的な三次元球殻内マントル対流数値シミュレーションプログラムの開発に世界で初めて成功し、ベンチマークテストを行った。このインヤン格子は、緯度経度格子の低緯度領域を二つ組み合わせることにより、極での座標特異点を解消し、全球面にわたって格子間隔がほぼ均一になる利点がある。
Seno, T. and Yoshida, M. (2004) Phys. Earth Planet. Int.
今世紀以降に、エルサルバドル、ワシントン州、安芸灘において相次いで発生したスラブ浅部(深さ<60km)での大地震を解明するため、ハーバード大学CMTカタログや個々の文献から過去に世界中で発生した全ての地震(M≧7.0)のメカニズムを調べた。その結果、これらが発生している地域では、2、3の例外はあるものの、スラブ内部の応力場は伸張応力を示すが、その周辺の背弧も伸張となっているという共通したテクトニックな特徴を発見した。
Yoshida, M. and Ogawa, M. (2004) Geophys. Res. Lett.
プレート運動を自発的に発生させるレオロジー(温度と圧力、応力の履歴に依存する粘性率)を考慮した三次元矩形内のマントル対流の数値シミュレーションを行い、上昇プルームが高粘性のリソスフェアに及ぼす影響を調べた。その結果、適切な破壊強度(降伏応力)の下では、上昇プルームがリソスフェアを局所的に破壊し、やがて実際の地球の「プレート境界」に似た線状の低粘性領域とその低粘性領域に分けられた水平スケールの大きい「プレート」が形成されることを確認した。
Yoshida, M. et al. (2001) Earth Planet. Space
地震活動に基づく上部マントルのスラブモデルや、過去1~2億年の沈み込みスラブの歴史を考慮したモデルを用いて、現在のマントル内部の定常速度場を計算し、地球上の代表的なプレートの運動方向や絶対速度の再現を試みた。その結果、高粘性のプレート内部と低粘性のプレート境界との粘性率比を増加させるにつれ、プレート運動のトロイダルエネルギーが増加し、その比が10^3になるとポロイダルエネルギーと同程度になることなどが分かった。
Honda, S. et al. (2000) Earth Planet. Sci. Lett.
二次元・三次元の矩形モデル、及び、三次元球殻モデルのさまざまなジオメトリにおいて、高粘性の超大陸を考慮したマントル対流の数値シミュレーションを行った。内部発熱量を変化させた系統的な計算結果を基に、境界層理論を用いて実際のマントルのレイリー数(10^7)で見積もると、マントル対流の温度構造と流れのパターンの再編による超大陸下の上昇プルームは、少なくとも2~4億年程度の時間スケールで発生することなどを明らかにした。
Yoshida, M. et al. (1999) Geophys. Res. Lett.
高粘性の超大陸を考慮したマントル対流の数値シミュレーションを世界で初めて三次元球殻モデルで行った。その結果、超大陸がマントルの「蓋」の役割をする熱遮蔽効果(毛布効果)によって、超大陸下のマントルの温度が上昇し、大陸下から海洋リソスフェア下に向かう流れとその反流によってCMBから大規模なマントル上昇流が数億年の時間スケールで発生することが分かった。この超大陸下の上昇流の発生により次数1のマントル対流パターンが生まれた。