大陸移動を再現するマントル対流数値シミュレーション

はじめに

 地球上に存在する大陸(以下では、大陸リソスフェアとその直下のテクトスフェアも「大陸」に含む)は、マントル対流の熱的・物質的進化、ひいては地球の進化に多大な影響を与えてきた。地球史において、大陸は離合集散を繰り返してきたが、ある時期にそれらの大陸が地球上のほぼ一箇所に集合したものを「超大陸」と呼ぶ。過去の地球上では,約3億年前に「パンゲア」、約10億年前に「ロディニア」、約18億年前に「コロンビア(あるいは,ネーナ)」と呼ばれる超大陸が形成されたとされる(それ以前にも超大陸が存在していたという説もある)。超大陸が分裂し、次の新しい超大陸が形成される一連の過程を「超大陸サイクル」と呼ぶ.超大陸サイクルの周期は7〜8億年である。

超大陸サイクルと大陸移動のメカニズム

 超大陸の形成パターンには、内転(内向)パターンと(b)外転(外向)パターンの二種類がある(図1)。超大陸が分裂して新しい海ができ、やがてその海が閉じ始めて超大陸が再び形成される過程を、カナダの地球物理学者でプレートテクトニクス理論の創始者の一人であるジョン・ツゾー・ウィルソン(1908-1993)の名前にちなんで「ウィルソンサイクル」と呼ぶが、これは内転パターンである。一方、新しい海がどんどん拡大していき、超大陸が分裂する前からあった古い海が消滅させるように大陸が集合して超大陸が形成されるパターンもある(外転パターン)。実際の地球の歴史では、内転パターンと外転パターンの両方が起こってきたと考えられる。
 図1は超大陸サイクルのメカニズムを表している。(a)から(c)または(b)から(c)は大陸が下降プルーム(マントル下降流)に引き寄せられて集まり、超大陸が形成される様子を表している。(d)から(e)では、超大陸の熱遮蔽効果によって超大陸直下の高温領域の形成され、さらにマントル深部から上昇プルームが発生することによって超大陸が分裂する様子を表している。現在の地球の状態は大陸がもっともばらけた(f)に近く、古い海は太平洋、新しい海は大西洋に相当する。

図1: 超大陸サイクルの模式図(吉田、2015b)。

超大陸の分裂のメカニズム

 超大陸を分裂させる原動力は、そのメカニズムの観点から二つの考え方がある(木村, 1997;吉田, 2015a)。一つのメカニズムは、超大陸直下の高温のマントルの水平方向に流れによって、超大陸内部に伸張応力が働いて分裂するという考えである。このメカニズムは能動的分裂と呼ばれる(マントルプルームの視点から"能動的"という意味)。もう一つのメカニズムは、超大陸を囲む地球上の全プレートが押し合いへし合いする相互運動によって生まれるプレート境界力(前出)が原因となって、超大陸内部に伸張応力が働いて分裂が起こるという考え方である。後者の場合、超大陸の下に、必ずしもマントルプルームが存在する必要はなく、仮に存在するとしても、マントルプルームは超大陸分裂を二次的に後押しする役目を果たすのだろう。このメカニズムは受動的分裂と呼ばれる。
 パンゲアの分裂に関しては、地質学的証拠から約2億年前から1億年前にかけてホットスポットプルームが断続的に上昇し、段階的に分裂が始まったと言われているので(Storey, 1995)、能動的分裂が主要なメカニズムだったのかも知れない。約7億5000万年前に分裂した超大陸ロディニアも現在の太平洋下にあった大規模なマントル上昇流が分裂の原因だったとする地質学的証拠もあるらしい(例えば,Li et al., 2008)。ただ、必ずしも能動的分裂が主要なメカニズムであると断定できる決定的な地質学的・地球物理学的証拠はまだなく、実際の地球の超大陸分裂では二つのメカニズムが複合的に起こったと、現状では考えてよいかもしれない。
 能動的分裂はさらに二つのメカニズムが考えられる。超大陸がマントルにとって毛布の役割を果たし、超大陸の直下がマントルの放射性発熱によってじわじわと高温になり、それに伴う水平方向の流れが超大陸を引き裂くというメカニズムである(図2a)。これは、超大陸の熱遮蔽効果、あるいは、毛布効果と呼ばれる。もう一つは、マントル深部からの上昇プルームが超大陸を引き裂くというメカニズムである(図2b)。一方、受動的メカニズムは、超大陸を取り囲む沈み込み帯(海溝)の後退によって超大陸(大陸プレート)と海洋プレートの間に隙間ができ、それを埋めるように、見かけ上、超大陸が海溝側に押されるように働く力が働いて、超大陸が引き裂かれるというメカニズムである(図2c)。以下に紹介する本研究の数値シミュレーションでは、毛布効果の役割について注目する。

図2: 超大陸分裂のメカニズムの考え方。

これまでの数値シミュレーション

 大陸移動とマントル対流との熱的・力学的相互作用を物理的に理解する上で、マントル対流の計算機シミュレーションは重要な一翼を担っている。
 大陸が考慮されたマントル対流の数値シミュレーション研究は、1988年に発表されたガーニスの二次元矩形モデル(Gurnis, 1988)を筆頭に、1990年代の計算機性能の向上を経て、1999年に発表された我々の三次元球殻モデル以降、世界の幾つかのグループによって研究が進められている。これらの研究から得られた主な結論は次の通りである。
  1. 超大陸による熱遮蔽効果(超大陸がマントルにとって毛布の役割をする効果)によって、 超大陸直下のマントルの温度が上昇し、やがてマントルに全球規模の流れを引き起こす。これによって、マントル内にdegree-1温度構造(超大陸側に上昇流、海洋側に下降流が卓越する構造)が形成され、数億年の時間スケールで超大陸下に発生する(Yoshida et al., 1999; Yoshida, 2010a)。
  2. 超大陸縁辺での海洋プレートの沈み込むことで、CMB直上の温度境界層が刺激され、CMBから上昇流が発生し、超大陸直下の温度が上昇することもある(Zhong et al., 2007)。
  3. 超大陸下の熱遮蔽効果に伴うマントルのdegree-1構造の形成は 大陸の周期的な離合集散を導く。特にコアからの加熱の割合が大きい場合には、積極的な上昇プルームの発生により、その周期が実際の大陸の離合集散のように不規則になる(Phillips and Bunge, 2005; 2007)。
 Phillips and Bunge (2005, 2007)のモデルでは、マントルの粘性率は下部マントルで増加させているが、粘性率の温度依存性は考慮されていないことに注意したい。つまり、表層の温度境界層はプレートのように固くなっていない。従って、彼らの結果は、高粘性のスラブが表層のプレートを引っ張る力(スラブ引っ張り力)がなくてもマントルの熱対流運動が大陸を駆動させるのに十分な力を持っていることを示唆している。
 ここで最も重要なことは、大陸が最も移動しやすい条件はマントル対流の温度構造ができるだけ長波長構造の場合であり、それは超大陸直下の温度が熱遮蔽効果によって実現されることである(吉田, 2015a)。

大陸移動を再現するシミュレーションモデルの開発

 これらの研究では、大陸は剛体的な(変形のしない)高粘性の「板(あるいは蓋)」とモデル化されてきた。大陸はマントル対流システムとは力学的にほぼ独立した領域だからである。その一方で大陸は本来、地球史を通じてマントル物質の融解と化学分化により生成され、物理的には、物質拡散がほぼゼロの流体の集合体である。そのため、マントル対流計算で用いられる通常の計算手法の枠組みでは計算精度の問題により、その集合体の移動(移流)、つまり、大陸移動をマントル対流と同時にシミュレートすることが困難であった。そこで、私は、粒子法と呼ばれる手法を発展させることで、大陸自体の変形とその移動が可能な独自の三次元マントル対流モデルを開発した(Yoshida, 2010b)。

インド亜大陸の高速北進の原因

 超大陸パンゲアが分裂し、現在の地球の六大陸が形成される過程で顕著なイベントの一つは、パンゲアの南半分を構成していたゴンドワナ大陸の一部であったインド亜大陸がテーチス海を高速で北上してユーラシア大陸に衝突し、現在もなお北上を続けていることである(図3)。この衝突によってかつてはテーチス海の海底であった場所が隆起し、「世界の屋根」と呼ばれるヒマラヤ山脈とチベット高原が形成され、周辺の東アジアの地震や地殻変動を引き起こしている(2015年4月25日に発生したネパールの大地震もインド亜大陸の衝突が原因である)。

図3: 古地磁気学的・地質学的証拠から復元されたインド亜大陸の北進(Courtesy of Prof. Blakey)。

 一方で、インド亜大陸の衝突によって生じたヒマラヤ山脈・チベット高原の隆起は、アジアモンスーン気候の成立に寄与し、新第三紀以降の地球規模の寒冷化をもたらしている。このように現在の地球の活動に多大な影響を与えているインド亜大陸の北上は、現代地球科学において重大な関心事であるが、その原因は未だ解明されていなかった。

パンゲアを考慮した2億年前から現在までのマントル対流数値シミュレーション

 私は、精密な地質学的・古地磁気学的データによって復元された2億年前の超大陸パンゲアの形状データと、実際のマントルの物性パラメーターを考慮した三次元全球内のマントル対流の大規模計算機シミュレーションを世界で初めて実施し、2億年前から現在までの大陸移動の様子を調べた。
 さまざまな物性パラメーターを変化させて系統的なシミュレーションを実施した結果、大陸と海洋マントルとの粘性率の比が103の場合に、実際の地球の時間スケールで、大西洋の拡大やインド亜大陸の高速北進とユーラシア大陸への衝突など、パンゲア分裂後の地球表層の“大イベント”が再現され、計算開始から2億年後に、現在の地球に近い大陸配置が再現された(図4)。

図4: マントル対流の数値シミュレーションで得られたマントル内部の温度構造の時間変化(Yoshida and Hamano, 2015)。(a)1億7500万年前、(b)1億年前、(c)5000万年前、(d)現在に相当する時間。白色の等値面は各深さの平均温度よりも100℃温度が低く、濃い灰色の等値面は100℃温度が高い。表層の薄い灰色の領域は大陸の位置。インド亜大陸の高速北進が再現されている。

 特に、パンゲアの分裂は超大陸の熱遮蔽効果(毛布効果)によるパンゲア直下のマントルの高温異常が大きく寄与することが分かった。これはパンゲアの下に溜まった熱を「裂け目」を作ることによりマントルから地表へ吐き出す必要があるためである。また、パンゲアの一部であったインド亜大陸の高速北進の主要な原動力は、パンゲア分裂直後からテーチス海北部に発達するマントル下降流(コールドプルーム)であることが明らかになった。そのマントル下降流(コールドプルーム)は、パンゲア直下のマントルの高温異常、及び、パンゲアの下(現在のアフリカ大陸の下)のマントル深部に元々存在していた大規模なホットプルームに励起されるマントルの大規模な流れによって、テーチス海北部のローラシア大陸の縁(大陸・海洋境界)に自発的に形成される。
 地震波トモグラフィーの手法で画像化された現在のマントルの三次元地震波速度構造分布から、このマントル下降流(コールドプルーム)に起因すると思われる地震波高速度領域(低温領域)が現在もなおマントルの奥深くに存在することが確認されている。ユーラシア大陸に衝突後、沈み込み帯を失ったインドプレートが、ユーラシア大陸に衝突後、現在もなお北上を続けていることは、大陸移動の原動力がこのコールドプルームである何よりの証拠である。

まとめ

 超大陸パンゲアを考慮したマントル対流の計算機シミュレーションを世界で初めて行った。これは、ウェゲナーの『大陸と海洋の起源』(初版)の出版(1915年)、つまり、大陸移動説の“完成”からちょうど100年目の成果である。その結果、大西洋の拡大やインド亜大陸の高速北進など、パンゲア分裂以降の地球史の大イベントが再現され、ユーラシア大陸下に沈み込むマントル下降流(コールドプルーム)を伴うマントルの大規模な流れが、インド亜大陸の高速北進とユーラシア大陸への衝突の原因になったことが分かった。
 大陸移動の主要な原動力が、超大陸の熱遮蔽効果による超大陸直下の高温異常に起因するマントルの流れであることが分かったことは、CMBからの大規模な上昇プルーム(いわゆる、スーパープルーム)が大陸分裂や大陸移動の原動力となっていることを示唆するシミュレーションモデル(Zhong et al., 2007)や地質学的証拠から提案されているモデル(Maruyama et al., 2007; Li et al., 2008)とは一線を画す結果で、近年提唱されている“Top-down半球ダイナミクス仮説”(Iwamori and Nakamura, 2015)による、地球表層の運動、もしくは最上部マントルの流れがマントル全体の対流運動(ひいては、地球中心核の対流運動まで)を支配しているという考え方と調和的である。
 今後は、より正確な大陸配置を再現するために、初期条件の温度場(パンゲアの縁で沈み込むプレートの配置など)を試行錯誤的に探っていくことが必要である。

参考文献

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